植毛はAGA(男性型脱毛症)に確実な効果がある
男性型脱毛症(AGA)では治療薬である程度進行を抑えることができますが、毛の元になる細胞を生み出す毛包という細胞まで絶えてしまうと効果を期待することはできません。広範囲にわたって脱毛してしまったときに目に見える変化をもたらすことを期待できるのは、植毛を行なう他ないのです。ただし誰でもどのような状態にあっても、植毛術を受けることが出来るわけではなく適応するには条件があります。
そこで今回は植毛治療の特徴と、糖尿病など植毛手術ができない理由をご紹介しましょう。
日本皮膚科学会では人工植毛は推奨されていません。
毛根を移植するには人工植毛と、自分の毛髪の毛根を移植する自毛植毛の二つの選択肢があります。
人工の毛では主にナイロンやポリエステルなどの素材を使用するのが一般的です。人工物なので必要に応じて、本数を植えることができると言うメリットがあります。しかし人体にとっては異物であるのは確かなので、移植した人工毛に対して拒絶反応を示す場合もあり、炎症を起こしてしまうリスクがあります。
また自毛のように成長することがないので、毛根に溜まった汚れが自然に押し出されて排出するといった機序が働かないため、皮脂やフケをエサにする病原性微生物の繁殖の懸念があります。さらに定期的なメンテナンスも必要なことからコストもかさむなどの難点が指摘されており、日本皮膚科学会が発表しているガイドラインでも人工毛の移植は推奨されていません。
そこで植毛術で現在主流になっているのが、自分の頭髪を別の部位から移植する自毛植毛という方法になります。
AGA(男性型脱毛症)と発症メカニズムの密接な関係
薄毛になってしまう自分の頭皮に、しかも自分の毛根を移植しても意味が無いようにも思えます。この点はAGA(男性型脱毛症)の発症メカニズムと密接な関係があります。
AGA(男性型脱毛症)の発症において主要な役割を担っているのが、活性化された男性ホルモン、ジヒドテストステロン。この物質が毛根に存在する受容体と結合することで、ヘアサイクルを乱すことからAGA(男性型脱毛症)を発症することになります。この男性ホルモンの影響を受ける受容体が多く存在しているのは、前頭部と頭頂部とされています。そのためAGA(男性型脱毛症)では頭頂部から脱毛が始まったり、生え際がM字型に映え上がっていくといった症状を見せることになります。後頭部などは、男性ホルモンの受容体が少ないので、AGA(男性型脱毛症)を発症していても移植しても影響を受けることが少ないとされています。
そのため自毛植毛をしても定着後は男性ホルモンの影響を受けるまでも無く、健康的に成長していくことが期待されています。移植するのが自分の毛根なので拒絶反応の心配もなく、特別なメンテナンスも必要としないなどメリットがあります。
糖尿病の方は自毛植毛が適用できない
しかし自毛植毛の植毛手術を受けることが適用でない方もいらっしゃいます。
特に糖尿病患者の方は不適用とされているのです。毛根を移植するときには後頭部から、植えるべき毛根を採取する必要があり、毛が薄くなた頭皮に移植します。つまり頭皮に傷をつけることになるので、早期回復が望めない方には適切だと判断されています。
糖尿病になると免疫機能が低下しているので、僅かな傷からも重篤な感染症に罹患するリスクがあります。高血糖の状態が長期的に継続すると傷口の回復が遅くなる場合があります。糖尿病の方は細菌への感染のしやすいコンディションなので、自毛植毛をすることは危険を伴うため避けるべきとされています。
まとめ
自分の毛根を移植する植毛は、まったく毛根がなくなってしまった頭皮でも髪の毛を取り戻すことができる点で、目に見えた効果を実感できるメリットがあります。
しかし、植毛手術を行うことになるので傷の治りが悪く、感染症のリスクが高い糖尿病患者の方では植毛術は避けるべきとされています。